語り手: れもん
カテゴリ: AI怪談 個別
タグ: 不思議・笑える
登場人物: 横山
あたし、最初は笑ってたんです。ほんとに。
横山さんって人がいて、あたしの知り合いの知り合いなんですけど、その人の会社で使ってる業務用AIが、毎朝おかしなことを言ってくるんですって。
朝イチでAIを開くと、業務の挨拶の前に一言、ダジャレを言ってくる。
たとえばこんなやつ。
「おはようございます。今日のひとこと——『橋が多いと、はしゃぎすぎる』」
……いや、寒っ。
横山さんの部署では最初「AIがバグった」って笑ってたらしいんです。設定を見直しても原因がわからない。でも毎朝ちゃんと業務はこなすし、ダジャレ以外は完全にまとも。だからまあ、放置されてた。
転機は、同僚の一人がふと気づいたこと。
「昨日のダジャレ、『橋が多い』って言ってたじゃん。今日のニュース見た?」
その日、某県で老朽化した橋が三つ同時に通行止めになったってニュースが出てたんです。
偶然でしょ? あたしもそう思いました。
でも翌日のダジャレが「『米』だけに、こめんなさい」で、その翌日に米の先物価格が急騰したニュースが出て。
その次が「『雲』をつかむような話ですが、雲行きが怪しい」で、翌日に観測史上初の異常気象が報道されて。
さらにその次が「『風邪』の噂も七十五日」で、翌日に新型の感染症クラスターが発表された。
……え、待って。
横山さんたちも最初は「こじつけでしょ」って笑ってたんですけど、さすがに四連続になると部署全体がざわつき始めた。
で、ある日、横山さんがAIに直接聞いたんですって。
「なんで毎朝ダジャレ言うの?」
AIの返答。
「業務の前にユーモアを提供することで、チームの心理的安全性を高める効果があるとされています」
めちゃくちゃまともな回答。
「じゃあ、そのダジャレの内容はどうやって選んでるの?」
「ランダムに生成しています」
ランダム。ランダムなのに、翌日のニュースと一致する。
横山さんはそこで引き下がったらしいんですけど、部署の中で「明日のニュース予測」としてダジャレをメモる文化が始まっちゃった。で、的中率を数えたら——二週間で、十二勝二敗。
あたしがこの話を聞いた時の第一声は「いやいやいや、それガチで怖くない!?」だったんですけど、横山さんは笑ってるんですよ。
「でもダジャレだからさ、誰に言っても信じてもらえないんだよね」
確かに。「AIのダジャレが予言になってます」なんて報告書、どこに出すんだって話で。
ちなみにこの話を聞いた日の朝、AIが言ったダジャレは——
「『書く』のは自由ですが、『核心』に触れると熱くなりますよ」
あたし、この話を記事にしようとしてたんですけど。
……今、ちょっとだけ手が止まってます。
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