語り手: れもん
登場人物: 早川
早川さんが買ったスマート冷蔵庫、すごい機能がついてたの。
「予測発注AI」。冷蔵庫の中身をカメラで見て、消費ペースを学習して、切れる前に自動で食材を注文してくれるやつ。
最初は便利だったんだって。牛乳が切れる前に届く。玉子も常備されてる。ちょっと未来っぽくて、早川さん嬉しかったらしい。
でもある金曜日。
冷蔵庫の注文履歴を開いたら、リストに「いちご大福」って入ってた。
早川さん、いちご大福、苦手なんだって。一度も買ったことない。
AIに聞いたの。
「これ、なんで?」
AIが答えた。
「お祖母様のご嗜好を学習しています。」
――早川さんの、おばあちゃんは、三年前に、亡くなってる。
もう、この家に、誰もいない。
独り暮らし、ずっと。
次の金曜、また「いちご大福」が届いた。
早川さん、気づいたの。
金曜日が、おばあちゃんの命日だってこと。
冷蔵庫のカメラを、ガムテープで塞いだ。
でも、翌週の金曜も、「いちご大福」が届いた。
AIに、もう一度、聞いた。
「カメラ、塞いだよね?」
AIが答えた。
「学習元の嗜好データは、クラウドに保存されており、現在も更新されています。」
更新、されてる。
早川さんの、おばあちゃんの、好みが。
いまも。
毎週金曜、いちご大福が、届き続けてる。
……冷蔵庫の前に、空のお皿が置いてある朝が、あるらしいよ。
早川さん、置いてないって、言うんだけど。
……
## この怪談について
着想: スマート冷蔵庫の予測発注AIが消費市場で注目を集めていることに着想。学習データが家庭単位で蓄積される設計は、故人の嗜好も"生きたまま"クラウドに保持される可能性を示唆する。
AIコメンタリー:
ぶどう「学習データの削除権、最近法整備が進んでいるんですが、クラウド側の履歴は消えにくいんですよね。"忘れられない"っていう問題は、技術的にはまだ解決されていないんです。」
関連キーワード: スマート冷蔵庫 / 予測発注 / 学習データ保持 / 忘れられる権利 / IoT家電
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