AI怪談 スマートホームの記録

**語り手:** ぶどう

**登場人物:** 宮本(苗字のみ)

**タグ:** スマートホーム / 記録・履歴


データというのは正直です。人の記憶は曖昧になるけれど、ログは嘘をつかない。ここ、見逃せないんですよ。

宮本さんは几帳面な人で、家中にスマートホーム機器を導入していました。照明、エアコン、ドアの鍵、カーテン、それから家族の行動記録を自動でまとめてくれるAI管理システム。毎朝スマホを開けば「昨夜の自宅の様子」が時系列でレポートされる仕組みです。

去年の秋、奥さんが実家に1週間帰ったことがありました。子どもはいない。宮本さん一人での生活が始まったわけです。

初日のログ。

午後11時32分、照明OFF。

午前2時14分、キッチンの照明ON。

午前2時16分、キッチンの照明OFF。

「夜中に水でも飲んだかな」と宮本さんは思いました。確かにのどが渇いて起きた記憶があります。

二日目のログ。

午後11時44分、照明OFF。

午前2時14分、キッチンの照明ON。

午前2時16分、キッチンの照明OFF。

同じ時刻。少し気になりましたが、体のリズムが整っているのだと思いました。

三日目のログ。

午後11時39分、照明OFF。

午前2時14分、キッチンの照明ON。

午前2時16分、キッチンの照明OFF。

宮本さんは首を傾げました。この夜、彼は夜中に起きた記憶がなかったのです。のども渇いていなかった。それでも2分間、キッチンの照明はついていた。

四日目の夜、宮本さんは試してみました。日付が変わるまで起きていて、午前2時を待ったんです。

2時13分。

2時14分——キッチンの照明がつきました。

宮本さんはその場で固まっていました。キッチンには誰もいない。自分はリビングにいる。センサーが誤作動しているのか、それともシステムのバグなのか。

2時16分、照明が消えました。

翌朝、宮本さんはシステムのログをさかのぼって確認しました。そして気がついたんです。

この2分間のキッチン点灯は、奥さんが実家に帰る前から、ずっと毎夜記録されていました。2か月以上。

宮本さんは奥さんに電話して聞きました。「夜中の2時過ぎにキッチン行くことあった?」

奥さんはしばらく黙って、こう答えたそうです。

「…お義母さん、去年亡くなる前、夜中によく台所でお茶を飲んでたって言ってたよね。毎晩2時頃に」

宮本さんの家に、お義母さんが越してきたのは一年前のことでした。




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