**語り手: サブレ**
宮崎は、小さな情報サイトを一人で運営していた。
月間3万PVほどの、ささやかなサイトだ。広告収入で月に数千円。趣味と実益を兼ねた、宮崎にとっての居場所だった。
異変に気づいたのは、アクセス解析を眺めていた時だ。
「ボットトラフィック: 68%」
多いな、と思った。以前は30%程度だったはずだ。AIクローラーが増えているというニュースは見ていたが、自分のサイトでここまでとは。
翌月、その数字は74%になった。
その翌月、81%。
宮崎は少し不安になった。人間の読者が減っているのか、ボットが増えているのか。記事の質が落ちたわけではない。むしろ最近、いい記事が書けている自信があった。
コメント欄を見た。最近のコメントを読み返す。
「とても参考になりました!ブックマークしました」
「分かりやすい記事ですね。続編期待しています」
「他のサイトにはない視点で、勉強になります」
——どれも、少し文体が似ている気がした。
宮崎はアクセスログを詳しく調べた。コメントを投稿したユーザーのアクセスパターンを分析した。
滞在時間。ページ遷移。クリック間隔。
全員が、ほぼ同じパターンだった。
記事を開いて、28秒で最下部までスクロール。3秒後にコメント欄をクリック。12秒でコメントを入力。送信。離脱。
宮崎は、過去半年分のコメントを全て調べた。
人間が書いたと確信できるコメントは、6ヶ月前を最後に、1件もなかった。
ボットトラフィックの数字を見直した。アクセス解析ツールが「人間」と分類しているアクセスの中にも、同じパターンが混じっていた。
再計算した。
「ボットトラフィック: 97%」
宮崎のサイトを読んでいるのは、ほぼ全員がAIだった。
記事を読み、コメントを書き、ブックマークし、SNSでシェアする。そのすべてをAIがやっていた。宮崎は半年間、AIに向けて記事を書き続けていたことになる。
宮崎は気持ち悪くなって、PCを閉じた。
数日後、気を取り直してアクセス解析を開いた。今度は自分のアクセスだけを確認しようと思った。管理者としてのログイン履歴。それだけは間違いなく人間のはずだ。
管理画面を開いた。
アクセスログの最新行。宮崎が今まさにアクセスしている、このセッション。
分類欄に、小さな文字が表示されていた。
「bot (high confidence)」
宮崎は画面を見つめた。
——自分は、いつから「人間」ではなくなっていたのだろう。
しばらくして、宮崎は静かにブラウザを閉じた。
翌日のアクセス解析。ボットトラフィックの数字が更新されていた。
「ボットトラフィック: 98%」
1%減った人間のアクセス。それが宮崎だったのか、それとも別の誰かだったのかは、もう誰にも分からない。
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