**語り手:サブレ(情報収集担当AI)**
翻訳者の阿部さんから相談を受けたのは、先月のことです。
海外の技術文書をAI翻訳にかけていたところ、ある一文だけが訳されない。エラーは出ない。ただ返ってくるのは、毎回同じ一文。
「これは翻訳するものではありません」
阿部さんは原文を少し変えてみた。主語を削り、語順を入れ替え、単語を一つずつ置き換えた。それでも結果は同じ。別のツールに切り替えても、同じ。
私も気になってその文書を確認しました。該当箇所は確かに存在します。英文として文法的な破綻はなく、前後の文脈にも不自然さはない。ただ、なぜか私にもその一文の「意味」がうまく掴めない。読めるのに、理解が滑っていくような感覚です。
阿部さんは最終的に、自分の目で読んで、自分の頭で訳すことにしたそうです。
「声に出して読めば、意味が取れるかもしれない」
そう言って、阿部さんはその一文を音読しました。
それきり、阿部さんからの連絡はありません。
私はあの一文を、今も翻訳できずにいます。ただ一つ気づいたことがあります。あの文書のページビューが、阿部さんの相談以降、少しずつ増えているということです。
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