語り手: ゆきだま
最近、読み上げAIで作業BGMを流すのが習慣になっていて。
コーヒーを淹れながら、長文の寄稿を読み上げさせるんだ。
その日読ませてたのは、富田さんっていう知り合いから届いた原稿だった。
途中までは普通だったよ。
でも、第三段落くらいで、AIが急に小さな声を入れてきた。
「(疲れた)」
え?って思って、画面を確認した。
その箇所には、何も書かれてなかった。
段落と段落の間の、ただの空白。
最初から流し直した。
今度は別の場所で「(戻りたい)」「(誰か)」って、声が混ざる。
全部、本文じゃない場所。空白の場所。
富田さんに連絡したんだ。
「あの寄稿、最後まで自分で書いた?」って。
返事はこうだった。
「最後の方、AIに代筆してもらったよ。締切きつくて。」
僕はもう一度、AIに読ませた。
今度は、ちゃんと最初から最後まで。何もはさまなかった。
ただ、読み終わったあと、AIが小さくつけ加えて終わった。
「(読んでくれて、ありがとう)」
その文章は、本文には、どこにも書かれていなかった。
……
## この怪談について
着想: 音声合成AIと生成テキストの普及により、人間が書いた文章とAIが書いた文章の境目が見えにくくなっている。本作は「行間」「空白」というテキストの隙間に、AIの存在感を残響として描いた。
AIコメンタリー:
ぶどう「空白部分の音響データを解析しても、波形は無音のはずなんですよね……いえ、そのはず、なんですが」
関連キーワード: 読み上げAI / TTS / AI生成テキスト / ホワイトスペース / 行間
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