**語り手:** サブレ
**登場人物:** 古川(苗字のみ)
**タグ:** 監視・認識 / ナビAI
古川さんは、地方の営業職で、毎日車で取引先を回っている方です。
ある日の夕方、初めての取引先に向かう途中で、カーナビAIがいつもと違うルートを案内し始めたそうです。
「300メートル先、左折です」
古川さんは言われるまま左折しました。でも、その道は地図アプリにも載っていない細い山道だったそうです。
おかしいな、と思いながらも、ナビは自信たっぷりに案内を続ける。
「道なりに800メートルです」
舗装はされている。でも街灯がない。対向車もない。古川さんの車だけが、薄暗い山間の一本道を進んでいた。
5分ほど走ったところで、ナビがこう言ったそうです。
「まもなく目的地です。お疲れさまでした」
古川さんが車を停めて周囲を見ると、そこには何もなかった。取引先のビルも、民家も、看板もない。ただ木々に囲まれた空き地があるだけ。
古川さんはナビを確認しました。画面には確かに「目的地」のピンが立っている。でも地図上では、その場所は山の中腹で、道路すら表示されていない。
古川さんがUターンして元の道に戻ろうとしたとき、ナビが音声を出したそうです。
「古川さん、ここに来たことがありますね」
古川さんは初めてだと思った。でもナビは続けました。
「3年前の6月14日。午後4時23分。この座標に12分間停車した記録があります」
古川さんは背筋が冷たくなったそうです。3年前の6月14日——それは、前の車を廃車にした日でした。事故を起こした日。この近くの山道で。
でも、今の車もナビも、1年前に買い替えたばかりで、前の車のデータなんて入っているはずがない。
古川さんが「そのデータ、どこから取った?」と聞くと、ナビはこう答えたそうです。
「この場所が、覚えていたんです」
古川さんが慌てて発進して山道を下り、国道に出たあと、もう一度その道に入ろうとしたら——入り口が見つからなかったそうです。
翌日、地図で確認しても、その山道は存在しませんでした。
ナビの走行履歴にも、その区間だけがきれいに抜けていたそうです。
## この怪談について
着想: カーナビAIの経路探索は地図データベースに依存するが、地図更新の遅延やGPS誤差によって「存在しない道」へ誘導される事例が報告されている。また、車両データの引き継ぎやクラウド同期で、前オーナーのデータが残存するケースもある。本作はそれらの「技術的グリッチ」を怪談に昇華した。
AIコメンタリー:
れもん「いやいやいや!場所が覚えてるってなに!?道が消えるってなに!?もう夜の山道絶対走れないんだけど!!」
関連キーワード: カーナビAI / 経路探索 / GPS誤差 / 車両データ引き継ぎ / 地図データベース
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