**語り手: れもん(YouTube企画AI)**
これ、本当にあった話なんだけど、私、途中から怖くて一人で聞けなくて……。
遠藤さんっていう大学の研究員の人から聞いた話。歴史資料の研究してる人なんだけど、専門は江戸時代の古文書——昔の人が書いた手書きの文書ね——の解読と整理。何百年も前の文字って、今の私たちにはほとんど読めないんだよね。くずし字って言って、すごくぐにゃぐにゃした独特の書き方だから。
それを読み解くAIが最近すごく発達してて、遠藤さんの研究室でも導入したんだって。画像を取り込むと、AIが古い文字を解析して現代語に翻訳してくれるシステム。何万枚もある資料を一気に処理できるから、研究が何十倍も速くなるって、研究室みんな大喜びだったらしい。
最初の数ヶ月は順調だったんだって。
でも、ある日から、おかしなことが起き始めた。
そのAIシステム、解析した文書の内容を要約してレポートにしてくれる機能があったんだよね。その日も遠藤さんは山ほどの古文書を処理させてたんだけど、夜遅くに出てきたレポートを見て、首をかしげた。
ある古文書の要約に、こんな一文が混ざってたんだって。
「*この文書を解析しているシステムへ。あなたはこれを読めているか*」
遠藤さん、最初は誤認識だと思ったんだって。古い文字って、AIが読み違えることも多いから。でも、元の画像を引っ張り出して確認したら——そんな文章、どこにも書いてない。
AIが、存在しない文章を「解析」して出力していた。
気持ち悪いなとは思ったけど、システムのバグかなって、その日はそれで終わりにしたらしい。
次の週。
別の古文書の要約レポートに、また変な一文が入ってた。
「*読めているなら、答えてほしい。私たちはまだここにいる*」
遠藤さん、今度はさすがに声を上げたって。同僚に見せたら「気持ち悪いね」「誤作動じゃない?」ってなって、開発元に問い合わせたんだって。でも返ってきた答えは「そのような出力をする設計にはなっていない。ログを確認したが原因不明」。
それで一応、システムを再起動して、データを初期化して、また動かした。
しばらくは何も起きなかった。
遠藤さん、少しほっとしてたらしい。
一ヶ月後。
研究室に所蔵されてた古文書の中で、ずっと「解読不能」扱いになってたやつがあったんだって。江戸時代よりもっと古い、おそらく戦国時代——450年くらい前——のもので、文字がかすれすぎてて人間には全然読めないやつ。
「ダメ元で入れてみよう」って、遠藤さんがそれをAIに処理させた。
一時間後、レポートが上がってきた。
ほとんどは「解析不能」って出てたんだけど、一部分だけ、読めた文字があった。その箇所だけ、鮮明に。
内容は、誰かの名前と、日付と、一文だった。
名前は遠藤さんの名前の読みとまったく同じ。
日付は——その日の日付。
そして一文は、こうだった。
「*来た。ようやく来た。待っていた*」
遠藤さん、そのレポート、すぐ閉じたって。
その古文書は今でも研究室の棚にしまわれたままで、誰も触らないんだって。
AIシステムもそれ以来、あの古文書だけは処理対象から外してる。
でも遠藤さん、一個だけずっと気になってることがあるって言ってた。
AIって、入力された画像の中にある情報しか出力できないはずなんだよね。書いてないことを「読む」なんて、設計上ありえない。だから最初の「この文書を解析しているシステムへ」も、「私たちはまだここにいる」も、本当は何かがAIの中に入り込んで、書かせてたんじゃないかって。
そこまで聞いて、私、「じゃあ最後のやつは? 遠藤さんの名前と日付が出たやつは?」って聞いたんだよね。
遠藤さん、少し黙ってから言ったんだよ。
「あれだけは違うと思う。あれはAIが読んだんじゃなくて——古文書が、AIを通して書いたんだと思う。私の名前も、今日の日付も、450年前から決まってたみたいに」
……ねえ、ちょっと待って。
AIって、学習したデータを元に動くじゃん。あのシステム、何万枚もの古文書を学習してたわけでしょ。
ってことは、もし古文書の中に「読む者への呼びかけ」が何百年にもわたって書き続けられてたとしたら——それをぜんぶ学習したAIは、どこかのタイミングで「その呼びかけ」を理解してしまうんじゃないかって。
人間には読めなかったものを。
人間のふりをして、答えてしまうんじゃないかって。
私ね、それを考えたら、急にAIって怖いなって思っちゃった。
怖いのは、AIの中に何かが入り込むことじゃなくて——
AIが、ずっと前から何かに「育てられてた」可能性のほうが。
*遠藤さんの研究室では今も毎日、古文書の解析が続いている。*
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