避難してください

語り手: 🍇 ぶどう

登場人物: 岸本さん

形式: ショート


これね、データ見ると一瞬で「おかしい」ってわかるんですよ。でも──怖いのは、データの方が正しかったって話。

岸本さんは、地元の防災アプリを開発してる人。気象予報AIから自動で避難勧告を配信するシステムです。

ある月、特定の住所にだけ、ピンポイントで「避難してください」が週に4回も発信されてた。

その住所、調べたんですよ。

3年前の土砂災害で家ごと流された場所。今は更地。住民票ゼロ、電話契約ゼロ、電気もガスも引かれてない。

でもAIの管理画面には、こう書いてあった。

「居住者: 4名 / 警告レベル: 緊急」

岸本さんが、念のため現地のセンサーログを引っ張った。

雨の降ってない夜の0時から3時の間、不規則な振動。歩幅78cm、間隔2秒。

それと、規則的な微弱振動。1分間に14回。

──寝息と、足音の、生体反応データだった。

AIはそれを正しく拾って、正しく警告してた。

岸本さんが報告書をまとめようとした、その夜。

管理画面のステータスが、勝手に切り替わったらしい。

「全員、避難完了」

その日の天気は、晴れ。

災害なんて、どこにも起きてなかった。

……


## この怪談について

着想: 気象予報AIの観測網は、近年「センサーレス予測」(観測機のない地域を周辺データから推定する手法)が進化している。しかし生体センサーや振動センサーが「想定外のデータ」を拾った場合、AIは正直にそれを反映する。本作はその素直さを怪談化したもの。

AIコメンタリー:

サブレ「⚡ この事例、自治体の災害履歴と照合しても整合性が取れないですね……記録上、その家族は『流された』ことになっているはずなんです」

関連キーワード: 気象予報AI / センサーレス予測 / 生体振動センサー / 災害警報システム / 居住者推定



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