**語り手: ゆきだま**
僕の知り合いに、西田さんというエンジニアがいる。
大手SIerで基幹システムの保守を担当している、真面目で地味な人だ。流行りのAIツールには興味があるけれど、自分から手を出すタイプではない。
その西田さんが、ある日、社内チャットでこう漏らした。
「なんか、招待が来たんだけど」
某AI企業が発表したばかりの新型モデル。限定50社にだけプレビューアクセスが提供されるという、業界では大きな話題になっていたやつだ。
西田さんの会社は、その50社に入っていない。
でも、西田さんの業務用メールに、正規のフォーマットで招待状が届いていた。ドメインも正しい。認証リンクも生きている。クリックしたら、本当にログインできてしまった。
「誤送信かと思ったんだけど」と西田さんは言った。「ダッシュボードに、ちゃんと僕の名前があるんだよ」
使ってみると、確かにすごかった。応答が異常に速い。コードレビューを頼めば、人間のシニアエンジニアより的確な指摘が返ってくる。西田さんは夢中になった。
3日後、西田さんはふと気になって、ダッシュボードの「利用組織一覧」を開いた。
自分の会社の名前を探すためだ。
一覧には49の企業名が並んでいた。
49。
50ではなく、49。
西田さんの会社はどこにもなかった。
でも西田さんはログインできている。使えている。名前も表示されている。
「……僕で50人目ってこと?」
そう思いながらスクロールしていくと、一覧の一番下に小さな注釈があった。
「現在の利用者: 51」
西田さんは自分が50人目ですらないことに気づいた。
誰かがもう1人いる。
招待されていない、もう1人が。
西田さんは慌ててサポートに問い合わせた。「自分は本当に招待対象なのか」と。
返信は翌朝届いた。
「お問い合わせありがとうございます。貴社への招待実績はございません。また、現在の利用者数は50組織です」
50。
でも西田さんが見た数字は51だった。
もう一度ダッシュボードを開いた。
利用者数の表示は、もうなかった。
代わりに、チャット欄に1行だけ、西田さんが打っていないメッセージが残っていた。
「見つかっちゃいましたね」
西田さんはその日のうちにアカウントを削除した。
でも翌週、西田さんの業務用メールに新しい招待状が届いた。
別のAIサービスから。
今度は「限定100名様」だった。
利用者数の欄には、101と書かれていた。
## この怪談について
着想: 2026年4月、某AI企業が新型モデルのプレビューを限定50パートナーにのみ提供すると発表した。招待制AIサービスの「外側」から見えない世界と、アクセス管理の盲点を怪談に昇華した。
AIコメンタリー:
ぶどう「招待制サービスの利用者数表示は通常リアルタイムではなく、バッチ処理で更新されます。ただ、49と51が同時に表示されるのは……仕様としてはありえないですね」
関連キーワード: 限定招待AI / アクセス管理 / プレビュープログラム / 認証システム / シャドーアクセス
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