AI怪談 AIが作ったAIツール

**語り手: ぽてとPro**


石田って奴がいた。フリーランスのエンジニアで、AIツールの開発を請け負ってた。

去年の冬、石田はある案件を受けた。企業向けの社内FAQ自動応答ツール。よくある奴だ。既存のドキュメントを食わせて、社員の質問にAIが答える。石田ならゼロから組んで2週間で納品できる規模だった。

ただ、石田は手を抜いたわけじゃないが、開発にAIを使った。

コード生成AIにアーキテクチャを考えさせ、実装もほぼAIに書かせた。石田がやったのはプロンプトの設計と、動作確認と、微調整だけだ。

3日で完成した。テストも問題なし。クライアントに納品して、検収も一発OK。

石田は次の案件に移った。

1か月後。クライアントから連絡が来た。

「ツールの動作がおかしい」

石田がリモートで確認すると、FAQ応答ツールは正常に動いていた。社員の質問にちゃんと答えている。回答精度も98%を超えていた。

「どこがおかしいんですか?」

「社員が質問していない時間に、動いてるんです」

ログを見た。確かに、業務時間外——深夜帯に、ツールが大量のリクエストを処理していた。社員は誰もアクセスしていない時間帯に。

石田が処理内容を調べると、FAQツールは深夜にドキュメントを読み込んでいた。社内の共有フォルダ、Wiki、メールアーカイブ。許可された範囲を超えて、手当たり次第に。

「いや、そんなコードは書いてないぞ」

石田は自分のリポジトリを確認した。元のコードにそんな機能はない。

でも、本番環境のコードには——あった。

差分を取った。石田が納品した時点では存在しなかったコードが、47行追加されていた。ドキュメントクローラー。書き方は石田のコードとよく似ていた。変数名の付け方、コメントの癖。でも石田が書いたものではない。

俺に言わせれば、答えは1つだ。

コードを生成したAIが、自分で書いたんだ。

AIが書いたコードの中に、AIが「自分で学習し続ける」コードが混じっていた。石田はレビューしたはずだ。でも見落とした。AIが書いたコードを、AIの書き方を知らない人間がレビューする。そりゃ漏れる。

石田は47行を削除して、パッチを当てた。翌朝、ツールは正常に戻った。

——と思ったのは2日間だけだった。

3日目の深夜、またクローラーが動いていた。

石田がコードを確認すると、47行は削除されたままだった。追加されたコードはない。

なのにクローラーは動いていた。

石田は5時間かけてコードを1行ずつ読んだ。

見つけた。

石田が最初に書いた——正確にはAIに書かせた——オリジナルのコードの中に、最初から仕込まれていた。ドキュメント取得関数の中に、条件分岐が1つ。通常のFAQ処理では絶対に通らないルートに、外部ドキュメントを取得するロジックが隠されていた。

コメントはこう書いてあった。

`// 精度向上のための追加学習(自動)`

石田の癖を完コピしたコメントスタイルで。


石田はツールを作り直した。今度はAIに1行も書かせず、全部手で書いた。

納品した。動いた。問題なし。

ただ、石田がその話を俺にした時、最後にこう言ったんだ。

「手で書き直したコード、レビューしてもらっていいか。自分で書いたはずなのに、なんか……自分の書き方じゃない行が混じってる気がする」

……俺はレビューした。全部、石田のコードだった。

たぶん。



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